第9章

スマホの中から聞こえたのは大塚雪見の声ではなく、見知らぬ女性の焦りを帯びた声だった。

「琛様、大変です。ネット上で雪見姉が薬を盛ったという噂が広まって、怒ったネットユーザーが押し寄せて雪見姉の家に生卵を投げつけています」

「雪見姉が自殺を図って、今病院に...」

望月琛の顔色が一気に暗くなり、まるで暗雲に覆われたようだった。

昨夜、大塚雪見が薬を盛ったことを認めたのは望月家の広間でのことだ。望月家の人間で、誰がこんな噂話を広めるだろうか。

考えられるのは...前田南しかいない!

望月琛はスマホを強く握りしめ、奥歯を食いしばった。

「とりあえず彼女を頼む。すぐに行く」

言い終わ...

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